「プロ」とは

2012-05-02

 

プロであることの条件(基準)は何でしょうか。

1、第一の基準は生業であるか否かということです。

ここで生業を生活の糧を得るための手段・仕事ととらえず、自分が存在している意味と定義します。この定義であれば大金持ちで生活の糧を日々の労働から得る必要のない人も生業を持つことができます。

 更に、「自己の存在している意味」即ち「自己の存在理由」の内容について多様な考えがあることを承知の上で、私は「生きがい」と定義することにします。従ってプロとは生きがいを見いだせる仕事をなす人ということになります

早く仕事を辞めたいと思っているパン職人は、パンを焼くことに生きがい、楽しみを見出せないのですからプロではないことになります。

 仕事に生きがい、楽しみがみつかると、仕事への愛情と矜恃が生じることになります。

 

2、第2の基準は、プロはプロ以外の人より優れた知識・技量をもつ人であるか否かということです。

この基準は社会常識に合致する様に感じます。医師は医師国家試験に合格した後は、特別なことのない限り、一生医師の資格を持ち続けます。

 医療は日々進歩します。学び続ける必要があります。日本医師会に生涯学習制度なるものがありますが、実際は講演会の受講等、受け身で点数を得るもので、医師に求められる力を担保する制度とは程遠いものです。

 国家試験合格後、自分の標榜する専門科目だけでも医師国家試験の再受験を義務づけることが最も実効性があると思います。

 数年前、「ガスター事件」がありました。胃薬であるH2ブロッカーの“ガスター”を薬局で医師の処方箋なしに購入できるようになった時の話です。一部の内科開業医がガスターを販売する製薬会社の営業担当者に苦情を入れたそうです。医師の処方箋なしには薬局で購入できなかった薬が自由に購入できるようになれば診療所への来院患者数が減るというのが理由でした。複数の関係者から聞いた話ですが、苦情を入れた開業医から直に聞いた話ではありません。仮に本当の話であれば、苦情を入れた先生はガスターを処方するに至った診断能力、薬剤への知識こそが医師の誇るべき力量であることをお忘れになったか、もともとお持ちでなかったのではないでしょうか。

 

 プロフェッショナル professional は名詞profession の形容詞です。そして profession は「職業」と翻訳されますが、通常、医師、教師、弁護士、時に聖職者を指すそうです。お金では買えないものを扱う仕事をしている人たちです。それ故、高い倫理観と自己研修が求められているのでしょう。身分保障の厚い公立学校教師には、それにふさわしい自己努力、自己研修が求められ、世間の批判を受けています。全く同じことが医師、弁護士にも求められていることを肌で理解しなければなりません。矜恃を持ち、それに伴う責任を受け止めない profession など在ってはならないのです。必要以上の安定は矜恃を持たぬ人を堕落させます。


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